彼はもう冷静を取り戻した。
彼は充分過ぎる程頑張ったはずだ。
彼女を救えたのかはわからない。
だから彼はもうそろそろ休暇を取っても良い頃合いなのかもしれない。
祝事は終わり、彼の姉は幸せであったようだ。彼も幸せだったそうだ。もう充分じゃないか。
彼の言葉を記す場所はない。彼の居場所はどれも甘えであり、聞かれるための言葉でしかない。そこには何の価値もない。
悲しいのかもしれないけれど、彼は満足げに見えた。耐えた、この時まで耐えたのだ。
しかし、それは耐えただけに過ぎない。
しかし、彼は満足げに見える。
申し訳なさは全てにあるのだと言う。
生きるのも他人に迷惑をかけ、死ぬのにも他人に迷惑をかける。もはや、彼は耐えられないようだ。
独りならば気楽に死ねるではないか?
そうだろうか、そうなのかな、そうだろうね、いや違うと思うよ。さあね、彼にはわからないらしい。
夜の帳が下りるまで、あと少しだけ待てば良い、と彼は言った。